きらら雑誌の「表紙」を読み解いてみる

本記事は、saitamawhitecatさん主催の「まんがタイムきらら Advent Calendar 2021」6日目の記事となります。

adventar.org

ところでAdvent Calendarってクリスマスまでの日数をカウントダウンするカレンダーのことらしいですね。この記事を書いている途中に調べて初めて意味を知りました。

はじめに

初めましての方は初めまして。neonと申します。
普段はニコニコ大百科できらら関係の記事を書いていたりします。

いきなりですが皆さん、きらら雑誌で最も多くの人が目にするのはどこだと思いますか?

安定の人気作品?勢いのある話題作?それとも次号予告?

そう、正解はズバリ「表紙」です!

本屋で雑誌の顔として大衆の目に飛び込む表紙。
きらら読者である皆様の中には、今月号の表紙がどんな感じに仕上がったのか気になり、ワクワクした状態で発売日の0時を迎えた経験がある人も少なくないでしょう。
また、本来きらら雑誌を買うつもりが無い人でも、本屋でたまたま見かけて「表紙買い」する可能性だってあります。

まさに、「表紙こそ編集部が雑誌全体で最も力を入れている部分である」と言っても過言ではないでしょう。

まんがタイムきらら展」に行ったことがある人なら分かるかと思いますが、入場してすぐに目に入る壁一面ずっしりと並んだ表紙は圧巻の一言。きらら雑誌の表紙はそれだけの魔力を秘めているとも言えます。

今回はそんなきらら雑誌の表紙を、「どんな作品が」「どんな理由で」選出されたかについて焦点を当てて考察します。
本来なら創刊以来全ての号でやりたいところなのですが、流石に厳しいので2021年度(各雑誌2021年1月号~12月号の12冊)のみを対象とさせていただきます。ご了承ください。

それでは、本題に入っていきましょう。

前提(基礎レベルの確認)

表紙選出理由のケース分け

①単行本発売

身も蓋もない話だが、出版社というものはとにかく本が売れなければ話にならない。
そのため単行本発売が近づいた作品は編集部としても特に推したい作品となるので、その意志が雑誌表紙にも表れた形となる。
若手作品が表紙に選ばれるのは大半がこのケースである。
今回は雑誌発売前後1ヶ月以内に単行本が発売される場合をこれに分類した。
また、表紙で「コミックスn巻m月d日発売!」のように宣伝されている場合もこれに分類する。
ただし、②~④も同時に該当する場合はそちらを優先する。

②アニメ放送中

掲載作品のアニメが放送中に表紙を飾るケース。
雑誌未読のアニメ視聴者が見慣れた絵を表紙に見つけて、雑誌を手に取ってもらうことが狙いと考えられる。

③アニメ化発表

掲載誌の表紙でアニメ化を発表するケース。
今までのところ、きらら作品のアニメ化発表は例外なく雑誌発売時に表紙で行われる。
2019年初頭のキャラットで、次号予告を伏せた状態での3号連続アニメ化発表は記憶に新しいだろう。

④記念

最終回記念や連載10周年記念などで表紙を飾るケース。
その作品が雑誌に貢献したことに対する勲章みたいなものである。
まれにベテラン作家が復活新連載を開始した際に表紙となる場合があり、これも含めることにした。

⑤その他

上記いずれのケースにも当てはまらないもの。
便宜上「その他」としたが、実際のところ「よく分からない」と言った方が正しい。
アニメ化を経験した有名作品が該当しやすい。

各雑誌の表紙選出タイトルおよび選出理由一覧

  • 選出理由はそれぞれ上記の①~⑤のケースに(筆者の独断で)分類した。
  • 備考として、雑誌発売と同じ月に掲載作品の単行本が発売されている場合、それも付記した。

きらら

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若手ベテラン交えた合計10タイトルが並ぶというバリエーションの豊富さが目を引く。

単行本発売作品があればその作品、なければベテラン作品、といった基本スタイルを貫いており、非常に安定した表紙選出と言えるだろう。

選出理由は①と⑤に偏った。これはアニメ化発表やベテラン作品終了といった動きが少ないことを意味しているが、これを安定と取るか刺激不足と取るかは判断の難しいところである。

注目したいのは6月号の『星屑テレパス』。これは単行本発売とは関係ない単発での選出で、同月に単行本発売の『はなまるスキップ』を押しのけての選出となった。これは本作がきららの若手作品の中でも頭一つ抜けている証拠と見て間違いないだろう。

来年度以降、今年度で表紙を経験した若手作品の中から第2第3の『星屑テレパス』的ポジションの作品が現れ、ゆくゆくはきららの看板作品になるまで成長することを願っている。その頃には2017年の『スロウスタート』以来途絶えている、きらら本誌からのアニメ化発表もなされるであろう。

MAX

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昨年度までは比較的表紙のバラエティに富んでいたMAXだが、今年度に関しては『ご注文はうさぎですか?ごちうさ)』『ぼっち・ざ・ろっく!』の圧倒的2強。選出タイトル数もわずか5ときらら四誌の中でもぶっちぎりの最下位である。

アニメ関連での表紙選出ならともかく、理由⑤での選出が両作品合わせて5回。この中から一つでも他作品に回せなかったのかという疑念は拭えない。

3月号は連載開始10周年の『ごちうさ』が表紙だが、巻頭カラーは月末に単行本1巻発売の『ぬるめた』となっている。この辺はどちらを表紙にするか編集部でも相当迷ったことであろう。

注目はやはり11月号の『瑠東さんには敵いません!』。他作品の記念に被らないなど運に味方されたところがあるのは否めないが、若手作品唯一の選出であり、今後の活躍により一層期待できる。

また本調査では対象外となったものの、2022年1月号は同じく若手作品の『妖こそ怪異戸籍課へ』が選出。来年度こそ2強体制を崩せるか。期待が高まるスタートとなった。

フォワード

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変化球が多い印象のあるフォワードだが、表紙だけを見れば無理な選出は少なく、意外と基本方針に忠実なことが分かる。9月号の『追風のジン』や12月号の『すぱいしーでいず!』も原作者がベテラン作家であることを踏まえれば表紙選出はそこまで不思議なことではない。

では何故フォワードは変化球が多いという印象を受けるのであろうか?きらら四誌で唯一のストーリー形式というのももちろんあるが、表紙の視点から見るとフォワード固有の特長である「表紙と巻頭カラーの作品が一致しないことが多い」という点が理由の一つに挙げられる。実際、2021年度で表紙と巻頭カラーの作品が一致したのは半分以下の5回のみである。このシステムがフォワードをより奥深く、よりカオスなものにしている。

来年度はいきなり『スローループ』のアニメが控えているフォワード。だがその先には一体どんな景色が広がっているのだろうか。今の我々には予測不可能である。

キャラット

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表紙選出タイトル数は10と多いが、その大半がアニメ化経験orアニメ化予定作品。

選出理由も⑤が多く、「とりあえずアニメ化作品を表紙にしておけ」感が否めない結果となった。

注目するのは、そんな状況で11月号の表紙を勝ち取った『紡ぐ乙女と大正の月(紡ぐ乙女)』。唯一の単独で表紙を飾った未アニメ化作品であり、キャラットでは異例となる未アニメ化作品2度目の表紙選出となった。未アニメ化作品に厳しいキャラット編集部がここまで『紡ぐ乙女』を推している理由は一体何なのか?

……そう。賢明な読者であれば、「実は『紡ぐ乙女』はすでにアニメ化が内定している」という結論に時間をかけずたどり着けたことであろう。実際、キャラットで表紙を担当した作品はほぼ例外なくアニメ化を経験しているという事実もこの推論を後押ししている。これが真実か否か、その答え合わせは次に『紡ぐ乙女』が表紙を飾った号で明らかになるはずである。

来年度のキャラットは『まちカドまぞく』『RPG不動産』のアニメが内定しており、未アニメ化の若手作品はますます厳しい立場に追いやられることが懸念される。逆風に負けず踏ん張ってほしいところである。

おわりに

今回はきらら雑誌の表紙ピンポイントで考察してみましたが、いかがだったでしょうか。たった一年分の表紙を眺めているだけでも、色々と見えてくるものがあるんだなと何となく感じていただければ幸いです。

ここで筆者の個人的な話を。自分がきらら雑誌の表紙に興味を持つようになったのは2019年頃、きららMAXが若手作品を表紙に選ぶようになったあたりだと記憶しております。それまで表紙はアニメ化作品かそれに準ずる有名作品が選ばれるものだと思い込んでいた自分にとって衝撃的すぎる出来事でした。もしかしたら自分の好きなあの作品やこの作品も表紙を飾るかもしれないという期待。発売日になったら来月の表紙作品が気になって次号予告を真っ先にチェックする習慣ができたのもこの頃からです。最近の表紙関連で印象に残ったニュースは、『ステラのまほう』が最終回で無事にMAXの表紙を飾れることが決定したことですね。

ここまで表紙の魅力についてばかり書いてきましたが、もちろんそれだけで満足してはいけません。表紙は雑誌の「顔」であるのと同時に読者と作品を繋ぐ「扉」でもあり、その先にはたくさんの希望・夢・勇気・ときめきに満ちた世界が広がっています。

その中から一つでも自分の好きな作品を見つけ、アンケートを出したり、単行本を買ったり、SNSで感想を発信したりする。そうした地道な行動の積み重ねの果てに、その作品が雑誌の表紙を飾るのを見る。もしこういったことが実現できれば、それが将来きっと最大級の思い出になることでしょう。