まんがタイムきらら最前線!

本記事は、saitamawhitecatさん主催の「まんがタイムきらら Advent Calendar 2022」1日目の記事となります。

adventar.org

前回はきらら雑誌の表紙というテーマで参加させていただき、今年は参加するつもりはなかったのですがカレンダーの上旬が寂しそうだったので飛び入り参加しました。去年予想した紡ぐ乙女のアニメ化が決まらなかったので悲しい

はじめに

広大なネットの海からわざわざこの記事を開いたということは、あなたは少なからずきらら作品に興味があり、現在進行形で応援している作品がいくつかあるかと思われる。毎月きらら雑誌を追っている人も多いだろう。

しかし、きらら読者の中でもフォワードを読んでいないという人は意外と存在するのではないだろうか?「4コマが好きできららを追っているからフォワードは読まない」「ストーリー重視だから途中から読み始めるのはハードルが高い」「球詠とスローループしか読んでいない」といった意見もあるだろうし、同意できる部分もある。しかし、そんな漫然とした理由でフォワードを読まないのは「もったいない!」と言わざるを得ない。

4コマ誌に比べて高額な上に厚くてスペースを食うことから毎月物理書籍で購入するのが大変だったのも今は昔。現在ではCOMIC FUZをはじめとした電子書籍の読み放題プランが充実しており、これを利用して他のきらら雑誌を読んでいたらフォワードも読める環境になっているはずである。そのためフォワードを読むこと自体の物理的ハードルはかなり低くなっている。

また、最近のフォワード作品はどれもレベルが高くて雑誌全体で見ても勢いがあると言える。今年始まった作品だけでも、異世界転移が日常的に行われるようになった世界を時にリアルに時にコミカルに描いた『ほうかご再テンセイ!』、エロという一見距離を置きたくなるテーマだがその精神は間違いなく本気で読者も熱くなる『ももいろモンタージュ』等、面白い作品の1巻がすでに発売されている。最近終了した作品だと『さよなら幽霊ちゃん』『最果てのともだち』の幽霊2作品が記憶に新しい。

さらに、フォワードは連載作品のサイクルが早く、感覚で2ヶ月に1作品は新連載が開始している印象である。そのためストーリーが追いにくそうという心理的ハードルに対しても、最近開始した作品を読めば問題なくついて行けるため、すぐに最新の流行に追いつける。何事も始めるのなら「今」始めるのが結果的に一番長く続けられるのだ。

こういった理由で、フォワードこそがまんがタイムきららの最前線を行く雑誌であると言っても過言ではないだろう。

今回はそんなフォワードにおいて、最近開始したため本記事を読めばすぐに追いつける、まさにまんがタイムきららの最前線で前進(Forward)を続けている3作品を紹介したい。

○魔法使いロゼの佐渡ライフ(おみなえし先生)

10月号から連載開始。現時点では4話が最新。

異世界で生まれ育ったロゼスタリア(ロゼ)は、王族でありながら黒髪の魔女として迫害を受けていた。自らの消失をもって世界への復讐を果たそうとした彼女は異世界転生を実行、そしてたどり着いた世界は新潟県佐渡島、その南端にあたる宿根木(しゅくねぎ)だった。見知らぬ土地で土屋紗菜(つちやさな)という少女に助けられ、彼女と共に観光案内所で働くことになったロゼ。トーキョーのような大都会に憧れる彼女だったが、紗菜の家は問題を抱えていたことが発覚していき……

本作を描くにあたっては作者が取材を重ねているとのことで、「かんずり(新潟名物の発酵調味料)」「はんぎり(桶の形をした小舟。宿根木のものは楕円型をしている)」といったご当地ネタも多い。佐渡島の昔ながらの町並みも奇麗に描かれており、2話で二人が空を飛んで(!)佐渡島を一望するシーンは見もの。

優秀だが暗い過去を抱えて人間不信になっていたロゼと、両親を失い親類から借金を引き継ぎながらも常にマイペースで明るい紗菜。似ているようで正反対な二人の掛け合いによって本作の雰囲気がほど良く保たれており、スローライフな世界観を引き立てるのに役立っている。背景設定は結構重いものの、それを感じさせすぎない、読んでいて癒される作品である。

あとこれは完全に個人の好みなのだが、清楚な雰囲気のある黒髪ロングのロゼがラフな格好しているのが好き。

○花唄メモワール(一ノ瀬けい先生)

12月号から連載開始。1話56ページ、2話60ページと現時点で2話ながらボリュームは多い。

高三で未来に対して漫然とした不安がある梅。そんな彼女は夏休みにひぃばあちゃんの旅館「花瀧屋」(福島県にある温泉宿がモデルらしい)へバイトしに行くことになる。旅館での仕事は厳しいものの、歴史ある旅館のこともひぃばあちゃんのことも大好きな梅。一日の仕事を終えて露天風呂で疲れを癒そうとした梅だったが、足を滑らせて湯舟の中に転んでしまい、気づくと彼女は大正12年冬の花瀧屋にいた。仕方なく大正時代の花瀧屋で働くことになった梅。時代の違いに戸惑いつつも初仕事を終え、この時代でもやっていけそうな自信がついたところで物語はさらなる展開を見せていき……

梅思いで100歳を超えてなお元気なひぃばあちゃん、地元の友人の巴枝(ともえ)、大正時代の花瀧屋で同僚となった藤野など、他の登場人物も魅力的で梅に対する感情も深いものがうかがえる。まだ2話なのに。

タイムスリップものはきららでもたまにある(神社で6年飛ばしたり令和から100年戻ったりフィレンツェから500年だったり)が、中でも今作はかなり特殊な設定であり先の展開が読めず、3話以降も楽しみに読んでいきたいところ。

異世界サウナへようこそ!~ルナちゃんはととのいたい~(はづき先生)

12月号から連載開始。作者はきらら本誌で『推しごとびより』を連載していたはづき先生。

主人公の笹下流奈(ささかるな)は大のサウナ好き。いつものように仕事終わりで疲れきった彼女が行きつけのサウナに行こうとするとそこは休業中。意識がもうろうとする中で導かれるように足を運び、たどり着いたのは「異世界サウナ」であった。炎魔法石のサウナ室、聖水の水風呂、雲の上の外気浴と、異世界ならではのサウナを堪能し、ととのったルナ。だが閉店間際、ととのいすぎによるトラブルで現実世界に帰れなくなってしまう。異世界におけるサウナの苦しい立ち位置を知り、過去の思い出から異世界サウナを無くしたくないと強く決心し、経営難を打開するべくルナの奮闘が始まる……

まだ1話ということで何とも言えないが、読んでいてサウナのような清涼感が味わえるような作品になることを期待したい。

おわりに

以上、最近連載開始した中で個人的に気に入っている3作品を紹介した。この記事では筆者の文章力の未熟さネタバレ防止の観点からあえてざっくりとした紹介にとどめたので、実際に読んでみて作品の素敵な世界に触れていただきたいきららは4コマしか読んでいないという人でも、新たな扉を開いてくれるようになったら幸いである。

完全に余談だが本記事を書いたきっかけの半分は『ちょっといっぱい!』がもうすぐ終わるのではという辛さによるものである。